不倫慰謝料を払えない!そもそも支払い義務はあるの?
不倫慰謝料を請求されたとき、経済的に払えない場合「払わなくても許してもらえるのでは?」と思ってしまうかもしれません。
しかし、支払義務があるのに払わないまま放置してしまうと、最終的には強制執行(財産の差し押さえ)などのリスクもあります。
そこで今回は、不倫慰謝料の支払義務、払えない場合のリスク・対処法を解説します。
このコラムの目次
1.不倫慰謝料を払えないとどうなるか
慰謝料請求と言っても、様々な段階があります。
内容証明郵便等で請求された段階であれば、そのとき払えなくても直ちに不利益が生じることはありません。
ただ、請求に応じなかったことで訴訟に発展するケースも多く、払えないからといって全く何もしないのは望ましくありません。
また、執行証書(民事執行法22条5号)で慰謝料の支払いを約束している場合や、訴訟で確定している場合には、強制執行で財産や給与を差し押さえられてしまう可能性があります。
いずれにしても「どうせ何もされない」と考えてはいけませんし、無視してもいけません。
2.不倫慰謝料の支払いについての検討
とはいえ、不倫慰謝料を突然請求されたら、焦りや動揺もあると思います。
しかし、まずは落ち着いて以下の点を検討することが大切です。
(1) 不倫慰謝料の支払い義務
まずは、ご自分に不倫慰謝料の支払義務があるかを検討しましょう。
不倫についての慰謝料は、民法で離婚原因の一つになっている「不貞行為」について(民法770条1項1号)、平穏な婚姻関係を破綻させることで発生するもので、不法行為の損害賠償として請求されます(民法709条、710条)。
この「不貞行為」にあたると言えるには、原則として肉体関係があることが必要です。
また、不法行為の要件として故意または過失が必要です。
したがって、以下のいずれかに該当する場合、原則として慰謝料は発生しません。
- 肉体関係がない
- 不倫以前から夫婦の婚姻関係が破綻していた
- 不倫相手が既婚者だと過失なく知らなかった
- 相手から強制されていた
ただし、この1~4の主張が訴訟で認められることは少なく、当人同士の交渉でも納得してもらうことは難しいでしょう。
また、仮に慰謝料が発生していたとしても、3年の時効にかかるか(民法724条1号)、不倫相手が既に全額を支払っている場合には、支払いを拒むことができます。
(2) 不倫慰謝料の請求額が高すぎないか
一般に、慰謝料を請求する側は、比較的高額な金額で請求する傾向にあります。
しかし、慰謝料の金額は、裁判例の蓄積による相場ができています。
そのため、ご自分の状況と慰謝料相場とを比較し、減額交渉できる余地がある場合もあります。
これについては次の段落で説明します。
3.どうしても不倫慰謝料を払えない場合の対処法
支払義務があって、「払えないけど訴訟や差し押さえは困る」という方には、以下の2つの対処法が考えられます。
(1) 減額の交渉
慰謝料の減額交渉をする際は、ただ「払えないから下げてほしい」と伝えても効果的ではありません。
請求する側としても精神的苦痛を受けたとして請求しているわけですから、減額してもらうには相応の根拠が必要です。
一般に、慰謝料が減額される要素としては、以下のものがあります。
- 不貞行為の回数が少ない
- 不貞行為の期間が短い
- 婚姻期間が短い
不倫慰謝料の金額が300万円を超えることは少ないため、400万円、500万円といった請求をされた場合には、ご自分の状況に照らして、減額してもらえる要素がないか考えてみてください。
もし全く減額される要素がない場合や、相場どおりの請求と思われる場合は、経済的事情を説明して交渉することになるでしょう。
この場合は、いくらなら払えるのかを事情とともに説明し、相手に納得してもらうしかありません。
次の分割払いとあわせて交渉してみましょう。
(2) 分割払いの交渉
通常、慰謝料請求では期限が決められていて、それまでに全て払うように、と請求されます。
請求側としては、「早く払ってもらいたい」「一回きりで終わらせたい」と思っている人も多く、必ず分割払いに応じてくれるとは限りません。
とはいえ、数百万円という金額を誰もが短い期間中に用意して支払えるとは思っていないでしょう。
また、交渉が決裂して訴訟となれば、手間と時間と費用がかかります。
そのため、分割払いの交渉余地がある場合もあります。
分割払いといってもご自分と相手方との取り決めですので、払い方は自由ですが、24回払いなど長期の分割払いに応じてもらえる可能性は低いです。
月々これくらいなら払える、という条件を提示して丁寧に交渉しましょう。
請求側は「本当に払ってくれるんだろうか」という不安もありますから、最初にある程度の額を払い、残額を分割するという方法も考えられます。
ご自分が払う意思があることを、口頭だけでなく最初の支払いでもしっかりと示しましょう。
なお、分割払いの取り決めは上記のような請求側の不安もあり、執行証書で示談書を作成することも少なくありません。
先にも述べたとおり、執行証書で決めた慰謝料を払えない場合は強制執行される可能性がありますので、支払いが遅れないようにご注意ください。
(3) 誠意のある交渉が大事
以上で解説しましたが、いずれにせよ、交渉は誠意をもって冷静に行うよう心がけてください。
感情的になっては、交渉はまとまりません。その後仮に訴訟になった場合に不利に働く可能性もあります。
もちろん、交渉の前提として不倫関係を断ち切ることも必要です。
この他、どうしてもという場合は家族や親戚などから借金をして払うということもあり得ますが、あまりおすすめはできない方法です。
不倫慰謝料の交渉が難航しているという場合は、一度弁護士にご相談ください。
4.まとめ
不倫慰謝料の請求を受けたら、まずは、①本当に支払義務のある請求なのか、②慰謝料の請求額は適切か、という2点を考えてみましょう。
そして、もし自分に支払義務があるものの経済的に払えない場合は、相手に謝罪の意思を伝え、誠実に交渉しましょう。
あまり請求から時間が経つと交渉は訴訟になるリスクも高まりますし、相手の態度が硬化してきて交渉が難しくなることもあります。
慰謝料の請求額が適切か判断できない、自分で交渉するのは怖い・不安という方は、お早めに弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、当事者同士より冷静な交渉ができますし、減額についても相場と根拠を示すことができます。
泉総合法律事務所では、数多くの不倫慰謝料問題を解決してきた実績があります。まずはお気軽にご相談ください。
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