交通事故

主婦の後遺障害慰謝料と逸失利益の相場(むち打ち)

家庭内の家事を担っている主婦がむち打ちになってしまうと、料理や洗濯などの家事はもちろん、育児や介護も大変になってしまいます。

そのむち打ちの後遺症が残ってしまったとき、その後遺症が、「後遺障害」であると、後遺障害等級認定手続で認定されれば、症状固定以前の通院中の治療費などケガの損害賠償請求とは別に、後遺症についても損害賠償請求できるようになります。

後遺症の損害賠償請求の内容は、よく賠償金の代表とされる慰謝料のひとつ、「後遺障害慰謝料」のほかにも、将来後遺症の悪影響で手に入らなくなるだろうと見込まれるお金を補填する「逸失利益」もあります。

主婦の方でも、家族のために家事をしていますから逸失利益が認められます。

ここでは、主婦が交通事故でむち打ちの後遺症の損害賠償請求をするにあたって、後遺障害慰謝料の相場や逸失利益の注意点について、分かりやすく説明します。

1.主婦がむち打ちになった場合の後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料では、主婦という立場が賠償金額を下げることはありません。目安となる金額は、等級に応じて決まっています。

「等級」とは、後遺障害を障害の重さにより基本的に14段階に区分けしたものです。
むち打ちの後遺症が認定されるとすれば、最も低い14級か、2つ上の12級になります。

交通事故の損害賠償金の基準には、①自賠責基準、②任意保険会社の基準、③弁護士基準(裁判基準)の3つがあり、弁護士に依頼した場合に用いられる③弁護士基準が最も高い相場となっています。

後遺障害慰謝料についてまとめた表は以下の通りです。

 

12級

14級

自賠責基準

93万円

32万円

弁護士基準

290万円

110万円

後遺障害の賠償金額の相場は、「後遺障害の等級」と、「交通事故の損害賠償金全体に当てはまる三つの基準」の二つで決まります。

弁護士に依頼すれば、後遺障害慰謝料は自賠責基準の3倍以上が相場になるのです(もちろん、過失相殺などの具体的な事情次第で金額は変動します)。

2.主婦がむち打ちになった場合の逸失利益

後遺障害のせいで将来手に入れられなくなる収入である逸失利益は、兼業主婦はもちろん、パートをしていない専業主婦にも認められます。

自分自身ではない家族のために掃除や洗濯、料理などの家事をすることも、立派な経済活動です。実際に給料が支払われていなくても、金銭的な価値は認められます。

もっとも、フルタイムで共働きの方はともかく、そうでない場合は、逸失利益の計算は少し特殊になります。
また、むち打ちは、逸失利益の計算上、等級通りの計算よりも金額が低くなってしまうことにも注意が必要です。

(1) 逸失利益の上限

自賠責から支払われる後遺障害の損害賠償金全体には、上限額があり、支払いは後遺障害慰謝料が優先されます。そのため、自賠責からの逸失利益は、12級の場合131万円まで、14級の場合43万円までしか支払われません。

一方、弁護士基準ならそのような上限はありません。

(2) 逸失利益の計算方法

逸失利益の計算方法は、下記の通りです。

①基礎収入×②労働能力喪失率×③労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数

①基礎収入

簡単に言えば年収です。事故前の年の年収を各種証明書で証明します。

専業主婦だと、家事にお金が支払われるべき価値があるとはいっても、実際に収入があるわけではないので、何円年収があると証明することができません。
そこで、事故前年のすべての働いている女性の平均賃金が採用されることになります。たとえば、2017年の平均賃金は377万8200円です。

保険会社は、収入がないから逸失利益は払わないと言ってくることがありますが、鵜呑みにしないでください。

また、「パートのため収入はあるけれども、平均賃金に届かない」という兼業主婦の場合は、公平のために平均賃金が採用されます。

それ以外の、高収入のパートをされている方やフルタイムで働いている方は、原則どおり事故前の年収が基礎収入となります。

この他、主婦が育児や介護をしていて、後遺障害により悪影響を受けていることは、基礎収入の金額が上がりやすくなる事情の一つです。

②労働能力喪失率

労働能力喪失率は、基本的に等級で目安が決まっています

  • 12級:14%
  • 14級:5%

「労働能力」とは、仕事や家事をするための能力のことです。上記はあくまで目安であり、細かな事情で大きく変わることもあります。

たとえば、プロのピアニストが手のしびれの後遺障害を負ってしまったら、その労働能力喪失率は何十%にもなりうるでしょう。

もっとも、専業主婦で家事しかしていないことや、症状の内容がむちうちであるというだけで、労働能力喪失率が下がってしまうことはありません。

③労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数

ライプニッツ係数」とは、後遺症により収入を得られない期間、毎年生じる逸失利益を一括払いするため、余計に払われてしまう利息をカット(控除)する「中間利息控除の係数」です。

労働能力喪失期間は、一般的には、症状固定後から67歳まで(高齢者なら、平均余命の半分)となっています。

もっとも、労働能力喪失期間も、被害者の方の職業や症状の内容・程度などによって変わります。

【専業主婦のむち打ちは労働能力期間が短くなってしまう】
むち打ちについては、実務上、労働能力喪失期間が制限されてしまうことが慣例になっています。
むち打ちの後遺症は痛みやしびれなどの「神経症状」。動かすと痛い、しびれて動かしにくい。とても苦痛ですが、動かせなくなるわけではありません。日々の暮らしの中で慣れていく。症状が緩和することもある。結果、労働能力が回復する可能性がある…とされてしまっているのです。
更に専業主婦の場合、「家事は毎日行うもの。仕事に比べると慣れが早い」と言われてしまいます。もちろん、症状がある部位や内容、程度、他の家族が協力できる家庭環境か、年齢などの諸事情によっては、充分な反論もできるでしょう。そのような事情をまとめ上げて保険会社に反論するには、専門家である弁護士の手助けが重要な役割を果たします。

3.賠償相場:むち打ちの後遺症が残った主婦のケース

むち打ちの後遺症が残ってしまった主婦が後遺障害等級認定を受け、弁護士に依頼して加害者の任意保険会社に損害賠償請求をした場合には、以下の支払いを受けられる可能性があります。

  • 後遺障害慰謝料:目安として110万円
  • 逸失利益:目安として約57~約95万円

上記はあくまで目安であり、具体的事情によりある程度増減します。
特に、損害賠償金の一つ「逸失利益」については、先述の通り、「主婦」「むち打ち」という事情が、保険会社との示談交渉を困難にしてしまうおそれがあるのです。

4.むち打ちによる後遺障害の問題点

最後に、主婦に限らず、むち打ちによる後遺障害認定で知っておくべきことをご紹介します。

事故の衝撃で重い頭を振り回すように強い力がかかってしまった首が損傷してしまうむち打ち。後遺症が残る場合、首を通る神経が損傷してしまっているため、神経が行き着く先の体のあちこちに痛みやしびれが生じます。

むち打ちは、交通事故の中でも特に多い追突事故で生じやすいケガ・後遺症ですから、損害賠償請求の理由の中でも多くの割合を占めます。にもかかわらず、損害賠償請求が難しく、金額も低く抑えられがちです。

なぜなら、むち打ちは損害賠償請求に必要な、症状の存在や程度、交通事故との因果関係の証明が困難だからです。

  • むち打ちの後遺症である痛みやしびれは、本人しかわからない「自覚症状」
  • 日常生活でも似たような症状が生じるため、交通事故以外の原因を疑われやすい
  • 様々な検査(特に画像検査)で異常が無くても症状が出ることがある

このような特徴が、むち打ちの後遺障害等級認定のハードルを上げ、認定後の損害賠償請求でも不利に働くことがあります。

そのため、満足いく賠償金を手に入れるには、丁寧な証拠集めと説得力ある主張が必要になります。

5.まとめ

むち打ちの後遺障害は、日常生活、特に家事に大きな支障が生じがちです。にも関わらず、むち打ちについては、制度上、損害賠償請求の内容が軽く見られがちです。

主婦の方に対しては、「働いていない」ことに目をつけて、保険会社が逸失利益など損害賠償金を値切ろうとしてくることが後を絶たず、具体的な事情をもとに損害があることをしっかりと主張する必要があります。

弁護士基準の相場なら、後遺障害慰謝料は自賠責基準よりも一気に跳ね上がります。
逸失利益も、自賠責からの支払いには限りがあります。残る部分を支払うべき任意保険会社は、むち打ちの主婦に対しては支払いを渋るものです。

弁護士に依頼して、あなたの家事やパート、仕事の具体的事情をもとに、交渉しましょう。

泉総合法律事務所は、これまで多数のむち打ちになってしまった主婦の方の後遺障害慰謝料や逸失利益の賠償請求をお手伝いしてまいりました。
皆様のご来訪をお待ちしております。

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