債務整理

仮想通貨で作った借金を個人再生で債務整理する方法

仮想通貨で作った借金を個人再生で債務整理する方法

近年、市場の急騰やその斬新さから、おおきな注目を集めた「ビットコイン」をはじめとした仮想通貨ですが、ここにきて、バブル崩壊が止まらなくなっています。

仮想通貨により莫大な借金を抱えてしまう方が、2018年には急増しました。
仮想通貨の投資では、数十倍ものレバレッジが可能なことや、ネットハッカーによる攻撃、さらには、市場を経営しているベンチャー企業の倒産などにより、損失額や損失が生じるリスクは、株式投資やFXよりもさらに大きくなってしまいました。

債務整理の方法の中でも、個人再生手続は、自己破産手続のデメリットを回避しつつ、任意整理以上の借金減額が可能です。

ここでは、仮想通貨による借金を個人再生手続で減額する方法を説明します。

1.仮想通貨による借金の恐ろしさ

仮想通貨は、実体のないインターネット上の仮想データにすぎませんが、結局は現実の日本円とリンクされていますから、一般的な「借金」になることを忘れてはいけません。

仮想通貨特有の問題点は様々なものがあります。

(1) 短時間で巨額の損失が生じる

仮想通貨の相場の変動の激しさは、株式や外国為替市場とは比べ物になりません。

レバレッジも、株式は3倍、FXは国内口座では25倍が上限であるところ、仮想通貨取引は数十倍もあることが珍しくありません。

そのため、わずかな資金で億万長者、一発逆転を目指そうとして、一瞬で奈落の底に突き落とされる悲劇が後を絶たないのです。

(2) 裁判所からギャンブル扱いされる

自己破産手続では、浪費やギャンブルにより作った借金は、原則として借金を免除しない事情(免責不許可事由)の一つとされています。

実務上、ほとんどの場合は、裁判所の総合判断で借金を免除する「裁量免責制度」で救済されますが、弁護士との相談後も仮想通貨に手を出したり、財産を隠したり、その他不誠実な態度をとったりすると、本当に免責されないことがあります。

仮想通貨はあくまで資産運用、投資だったという言い訳は、上述した仮想通貨取引の「投機」性もあって、裁判所には通用しません。

基本的には、仮想通貨取引はギャンブルとして扱われ、免責不許可事由があるとされてしまいます。

(3) 仮想通貨そのものが失われてしまうリスク

借金をして購入した仮想通貨そのものが消滅してしまうこともあります。

仮想データにすぎませんから、ハッカーにデータを書き換えられれば、「盗難」されてしまいますし、仮想通貨取引所はベンチャー企業が多いため、突然の倒産と市場閉鎖のリスクも無視できないのです。

2.仮想通貨による借金で個人再生が向いている方

個人再生手続は、自己破産手続のデメリットのいくつかを回避できる一方、借金の返済義務が残る点では、自己破産手続に劣ります。

仮想通貨の借金を負っている方の中でも、個人再生手続のほうが向いている方は、以下のような方でしょう。

(1) 高額な財産を維持したい方

自己破産手続では、債務者の生活に必要な「自由財産」と呼ばれるもの以外の財産は、債権者に配当するため裁判所により処分されてしまいます。

生活に余裕があり、資産運用のつもりで気軽に仮想通貨に手を出して大きな借金を作った方にとっては、大きな問題です。

一方、個人再生手続では、裁判所による財産の処分はありません

高額の預貯金や退職金、保険の解約返戻金、ローンを支払い終わったマイホームや自動車などを守りたいならば、個人再生手続を選択すべきです。

(2) 住宅ローンを支払い終えていない方

自己破産手続でも、個人再生手続であっても、担保となっている財産、例えば、住宅ローンの抵当権がついているマイホームは、裁判所ではなく債権者により処分されてしまいます。

個人再生手続では、住宅資金特別条項という制度を用いることができれば、ローン延滞後に保証会社が代位弁済し、差押えをされているマイホームであっても、処分を回避できる場合があります。

(3) 自己破産できないリスクが怖い方

冒頭で説明した通り、仮想通貨による借金があると、自己破産手続ができないリスクがあります。

他に問題がなく、まじめに手続きに協力すれば、借金を無くしてもらえることがほとんどですが、それでも怖いという方は、免責不許可事由のない個人再生手続を選択すべきです。

(4) 将来また借金をしてしまうと感じる方

自己破産手続から7年以内の再度の自己破産自体が免責不許可事由となります。

裁量免責による救済の可能性はありますが、また仮想通貨のようなギャンブル的投資で借金をしてしまっていた場合、裁量免責されない覚悟が必要です。

個人再生手続では、一般的に用いられる小規模個人再生手続は、裁判所の目が厳しくなることを度外視すれば、制度上は何度でも利用可能です。

(5) 警備員や保険業界、金融業界などで働いている方

自己破産手続では、手続中、上記のような他人の財産を取り扱う資格が制限されます。

そのため、勤務先に連絡して、転属や休職しなければなりません。

個人再生手続には、そのような制限は一切ありません

3.再生計画の履行可能性

個人再生手続をするにあたっては様々な注意点があります。

特に重要な点が、「再生計画の履行可能性」を裁判所に認めてもらえるかどうかです。

(1) 再生計画上の返済総額を定める基準

再生計画上の返済総額は、一般的に用いられる小規模個人再生では、以下の基準額のうち、一番高い金額となります。

①最低弁済額

借金の額に応じ、法律が定めている基準額です。

借金の額

最低弁済額

100万円未満

全額

100万円~500万円未満

100万円

500万円~1,500万円未満

借金の1/5の額(100万円~300万円)

1,500万円~3,000万円未満

300万円

3,000万円~5,000万円

借金の1/10の額(300万円~500万円)

②清算価値

債務者が自己破産をしたと仮定したときに債権者に配当される債務者の財産見込額とほぼ同じ金額です。

個人再生手続で裁判所により財産が処分されないで済むのは、清算価値が返済額の基準の一つになっているからです。

これを、清算価値保証の原則と言います。

(2) 清算価値による返済額の増加リスク

ロスカットに失敗して突然巨額の借金を負ってしまい、財産を維持するため個人再生手続を選択した方が履行可能性を認められるためには、清算価値について慎重な検討が必要となります。

以下、個別に簡単に各種財産がどのように清算価値に計上されるかを説明します。

①現金

99万円を差し引いた金額が清算価値に計上されます。

②預貯金

ほとんどの裁判所では、残高に関わらず全額が清算価値となります。

③退職金

一般的には8分の1が清算価値に計上されますが、勤続年数や退職予定時期により大きく変動します。

④保険の解約返戻金

年配の方では生命保険の解約返戻金が、お子様がいる方では、学資保険の解約返戻金が無視できなくなります。

⑤マイホーム

マイホームの査定額から住宅ローン残高が差し引かれて清算価値が算定されます。

若い方ですと、住宅ローンのほうがマイホームの価値を上回り、清算価値がゼロとされるオーバーローン状態のこともあるため、意外と問題にならないこともあります。

しかし、住宅価格が高額である、高額の頭金を入れていた、長年ローンを返済し続けていたなどの事情があると、ローン残高を差し引いても、マイホームの清算価値が重い負担になります。

(3) 再生計画上の返済以外の支出

再生計画上の返済以外の定期的な出費があると、履行可能性は認められにくくなります。

①住宅ローン

住宅資金特別条項を利用すると住宅ローンが一切減額されません。再生計画上の返済との二重払いが重い負担になります。

②仮想通貨の利益に対する税金

税金は、個人再生手続では減額されません。役所の担当部署で分納手続をする必要があります。

仮想通貨の利益は雑所得として所得税がかかります。

莫大な利益を上げた次の年に入って早々、利益をはるかに超える損失が生じて個人再生手続をした場合、税金を支払いつつ再生計画の履行ができるかが大きな問題となる恐れがあります。

なお、税金は自己破産をしてもなくなりません。

(4) 再生計画上の返済のための収入

借金の返済義務が残る個人再生手続では、収入がなければそもそも手続きが始まりませんし、収入が少なければ履行可能性も認められにくくなります。

仮想通貨取引の専業トレーダーの方は、アルバイトでもいいのでともかく働きましょう。

足りない場合は、親族からの援助や、財産の一部取り崩しで補えるか、弁護士と相談してください。

4.財産の維持

個人再生手続であっても、担保とされている財産は債権者に処分されることが原則であることを忘れてはいけません。

また、上記で簡単に触れたとおり、履行可能性が認められないようであれば、自ら資産の一部を取り崩す必要が生じる場合もあります。

(1) マイホーム処分を回避できるとは限らない

下記条件を満たしていなければ、住宅資金特別条項は利用できません。

  • 住宅ローンの中にマイホームに関連しない借金がないこと
  • 抵当権のついている建物が債務者の生活の場といえること
  • 債務者の住宅ローン以外の借金を担保する抵当権がついていないこと
  • 保証会社の代位弁済から申立てまで6か月以内であること

住宅ローンのついでに生活費や教育費も借りていたとき、仮想通貨取引の資金捻出のためマイホームを担保に不動産担保ローンを住宅ローンとは別に借りていたときなどには、マイホームの処分は避けられない恐れがあるのです。

(2) 自動車ローンに関する救済制度はない

自動車には住宅資金特別条項のような制度はありませんので、ローンが残っていれば、債権者に処分されてしまいます。

(3) 財産の自主的な取り崩し

収入不足の場合、自分で保険を解約したり、年配の方でしたら早期退職で退職金を手に入れたりすることで、履行可能性が認められることもあります。

自己破産でほとんどを処分されるよりはましです。

5.手続が利用できなくなる制度・違法行為

再生計画の履行可能性が認められない場合以外にも、個人再生手続を利用できなくなるリスクが生じる場合があります。

(1) 債権者の数が少ないか、特定の債権者に借金が集中している場合

①小規模個人再生における債権者の反対

一般的な手続の種類である小規模個人再生では、債権者の多数決で再生計画が否決されると、手続が打ち切られてしまいます。

上記の場合は、特に再生計画否決のリスクが無視できなくなります。

特に、仮想通貨取引の場合、相場の変動が激しいうえに、システム障害も多く、ロスカットが間に合わずに取引所から莫大な請求がされてしまうことがあるため、取引所の意向により手続の行方が左右される恐れがあります。

②債権者が反対できない給与所得者等再生のデメリット

もう一つの手続の種類である給与所得者等再生では、債権者は反対することができませんが、安定した収入が必要になります。

収入の安定性からすれば、自営業の方や歩合給の方は手続ができない恐れが高くなります。

また、返済額の基準に、「可処分所得の2年分」が追加されます。

高収入で扶養家族のいない独身の方ですと、返済額が高額になりすぎて、履行可能性が認められない恐れが生じます。

(2) 重大な違法行為がある場合

重大な違法行為があると、手続が利用できなくなる恐れがあります。

①財産隠し

清算価値を減少させるため、財産を隠すことは、最も重大な違法行為です。最悪、犯罪になります。

不動産登記や保険の契約者名義を手続直前に変更することは、財産隠しとみなされやすく、非常に危険です。

②債権者隠し

個人再生手続では、債権者は平等に扱われるという債権者平等の原則があります。

友人などからの借金を隠して、これまで通り支払おうとしないでください。

③偏頗弁済

偏頗弁済とは、支払不能後に特定の債権者にだけ返済する、債権者平等の原則に違反する行為です。その金額が清算価値に追加されるという制裁が加えられます。

高額の偏頗弁済を裁判所にうそをついてごまかし続ければ、手続が利用できなくなる恐れもあります。

④手続中に再度仮想通貨に手を出した場合

弁護士に依頼して以降に仮想通貨に手を出すと、裁判所としては、再生計画の履行ができないと判断する可能性が非常に高くなります。

6.仮想通貨による債務整理は弁護士に相談を

仮想通貨取引ならば、一気に資産を増やせると思い、ネットやニュースに煽られ、投資をしたものの、すぐにバブルの崩壊や市場の混乱に巻き込まれ、大きな損失を抱えている方は、たくさんいます。

借金をどうにかしたいが自己破産は嫌だ!という方にとって、個人再生手続は非常に便利な債務整理手続です。

しかし、個人再生手続を成功させるまでに、検討すべきこと、判断すべきことは多く、また、専門的で複雑な問題が多数転がっています。無理せず、出来る限り早くに、専門家である弁護士に相談しましょう。

泉総合法律事務所厚木支店では、個人再生により借金問題を解決した実績が多数ございます。厚木市、伊勢原市、泰野市、海老名市、相模線・小田急小田原線沿線にお住まい、お勤めの方は、是非ともお気軽にご相談ください。

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