自己破産手続の債権者集会は怖くない?その内容や流れを説明!
自己破産をすると、必ずではありませんが、裁判所で「債権者集会」という手続が行われる場合があります。
債権者集会には、申立代理人弁護士だけでなく、破産者本人も、裁判所へ出向いて出席する必要があります。
ご相談の際に債権者集会について説明をしますと、「大勢の債権者の前でさらし者のようになるのでしょうか?」とか「債権者から罵倒されたりしないでしょうか?」といった不安を口にされる依頼者様もいます。
しかし、実際のところ、個人の自己破産手続で開かれる債権者集会は、拍子抜けのあっけない手続であることが多いのです。
このコラムでは、自己破産手続の債権者集会について説明します。
このコラムの目次
1.債権者集会とは
債権者集会とは、債権者に対して、破産者が破産に至った事情・財産の換価状況など破産手続に関する情報などを報告・開示し、債権者の意見を破産手続に反映させるために、裁判所によって開催される集会です。
債権者は自己破産により借金を返済してもらえなくなりますから、大きな損害を受けます。
そこで、債権者集会は、債権者の利益を手続の中で守るために、債権者に情報を提供し、債務者の財産がどれだけ配当されるのかを説明したうえ、債権者が意見を言う機会を与えているのです。
しかし、自己破産をした場合、必ず債権者集会が開かれるというわけではありません。
「管財事件」という手続の種類で自己破産手続が行われた場合にだけ、開催され、もう一つの自己破産手続の種類である「同時廃止」では、開催されません。
2.債権者集会の目的
(1) 管財事件と債権者集会
自己破産の手続では、破産者の財産を調査し、換価・処分の対象となる財産があればこれを換価・処分して、債権者に公平に配当することになります。
ですが、裁判所に申し立てられる破産事件の件数は非常に多いので、これらの業務すべてを裁判所が行うとなると裁判所の負担が大きくなってしまいます。
そこで、管財事件では、裁判所から選任された「破産管財人」が裁判所の代わりに手続の中で様々な処理や調査を行います。
たとえば、
- 破産者の債務調査
- 破産者の財産調査及び管理・換価・処分
- 債権者への配当
- 免責不許可事由を調査し、借金を免除すべきか(※1)の意見を裁判所に報告
など、破産管財人は非常に幅広い権限を持って多くの作業を行います。
債権者集会でも、破産管財人は主導的な役割を果たします。
破産管財人は、債権者集会において、上記の様々な調査結果を報告し、また、免責不許可事由(※1)の有無や裁量免責をすべきかについての意見を述べたりすることになります。
免責不許可事由の典型は、ギャンブルや浪費による借金です。
法律の上では、免責不許可事由があると、原則として借金が免除されないことになっています。
しかし、実際のところ、財産を隠した、ウソの報告をしたなど、よほど悪質な場合でない限り、免責不許可事由がある破産者でも借金が免除されています。
裁判所が、破産管財人の報告をもとに、破産者の事情を総合考慮して借金の免除を認める「裁量免責制度」があるためです。
(2) 債権者集会の目的と種類
債権者集会の主な目的は、上記1で説明したとおり、破産者が破産に至った事情や財産の換価状況など破産手続に関する情報を債権者に報告・開示し、債権者の意見を破産手続に反映させることにあります。
そして、債権者集会は、より詳細な目的に応じて、次のような種類に分けられます。
①財産状況報告集会
財産状況報告集会は、破産手続開始決定後に最初に開かれる債権者集会で、破産者が破産に至った事情や破産者の財産状況を報告するために行われます。
②廃止意見聴取集会
廃止意見聴取集会は、破産手続廃止の決定にあたって債権者の意見を聞くための債権者集会です。
③任務終了による計算報告集会
任務終了による計算報告集会は、破産管財人の任務が終了したときに、配当や手続費用などの計算報告を目的として開催される債権者集会です。
この3つの種類は、債権者集会を、①破産者についての情報の提供、②債権者が意見を言う機会の提供、③配当についての情報提供、という3つの目的から見たものです。
必ず債権者集会が3回開かれるというわけではありません。
1回の債権者集会の中で、上記3つが全て行われることもありますし、逆に、同じ種類の債権者集会が何度も開かれることもないわけではありません。
3.債権者集会までの流れ
(1) 債権者集会期日はいつ決まる?
裁判所は、破産手続開始決定と同時に、財産状況報告集会の期日を定めなければならないとされています(破産法31条1項2号)。
もっとも、裁判所が独断で期日を決めるのではなく、事前に申立代理人と破産管財人(破産管財人候補者)の都合も聞いて日程を調整するのが通常です。
申立てをした裁判所にもよりますが、第1回債権者集会の期日は、破産手続開始決定後2~3ヶ月後の時期に指定されることが多いです。
(2) 債権者集会の出席者
債権者集会には、裁判官、破産管財人、破産者、申立代理人、そして、債権者が出席することになっています。
しかし、ここが非常に重要なポイントですが、個人の方の自己破産の場合、債権者が出席するケースはそれほど多くはありません。
債権者集会への債権者の出席は任意であり、個人の方の場合、貸金業者やクレジットカード会社、銀行が債権者であるケースが多く、これらの債権者は債権者集会に出席することはほとんどないからです。
出席があったとしても、よほどのことがない限り、一言二言の簡単な質問をするかどうかといったところでしょう。
貸金業者や銀行は、たくさんの人々にお金を貸していますから、個人が自己破産をしたからと言って、本気で口を出してくることはあまりないのです。
(3) 破産者が債権者集会を欠席することは可能?
これで一安心と胸をなでおろしたところで、「債権者が出席しないのであれば、そもそも自分も出席しないでもいいのでは?」と思ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
債権者集会が開催されるのは、裁判所が開いている時間帯ですから、平日の日中となります。そのため、お仕事をされている方の場合、債権者集会に出頭するためにお仕事を休む必要もでてきます。
ですが、「仕事が忙しくて休めない」とか「債権者と顔を合わせたくない」といった理由で債権者集会を欠席することや期日の変更をすることはできません。
実態はともかく、債権者集会は、自己破産の中でも重要な手続の一つです。
もし正当な理由なく債権者集会を欠席すれば、破産者の説明義務を果たそうとしなかったなど、手続に関する免責不許可事由に該当するおそれが非常に高いでしょう。
自己破産手続に協力をしないことは、免責不許可事由の中でも非常に悪質とされがちです。
また、破産管財人や裁判所は、破産者を裁量免責すべきかどうかの判断の中で、破産者が、誠実な態度で手続に協力しているかを非常に重視しています。
裁量免責されない可能性が一気に高まりますから、無断欠席だけは絶対におやめください。
ただし、病気や事故に遭ってしまったなどの仕方のない理由で出頭が難しい場合には、事前に裁判所に連絡して医師の診断書を提出するなどすれば、代理人弁護士が出頭することで欠席が許されることがあります。
4.債権者集会当日の流れ
原則的な債権者集会当日の流れを、出来るだけ具体的に説明します。
(1) 弁護士と待合わせ
債権者集会は、通常裁判所内の一室で開催されます。
債権者集会には破産者代理人弁護士も出頭しますので、会場に入る前に弁護士と待ち合わせをしていただきます。
揃いましたら、一緒に受付を済ませ、後は開始時刻まで会場で待機します。
裁判所に初めて行かれる方は道に迷われることも少なくありませんので、余裕をもってお出かけいただければと思います。
服装については、特に決まりはなく、スーツでなければならないということもありません。ただ、あまりにラフな格好ですと裁判官の心証が悪くなる可能性も否定できません。
繰り返しますが、裁量免責では誠実な態度を見せることが重要です。清潔で落ち着いた服装をするよう、ご注意ください。
(2) 実際の債権者集会の流れ
債権者集会が始まると、破産管財人から破産者の財産や借入れの状況などについて報告がなされます。債権者への配当が可能な場合には、配当についての報告もされます。
その後、債権者が出席していれば、質疑応答が行われます。
先ほど説明した通り、個人の方の自己破産の場合、債権者が出席すること自体が少ないのですが、出席した場合でも、「配当の見込みはあるか?」、「手続が終了するのはいつ頃か?」といった質問が中心です。
債権者から責め立てられたり、罵声を浴びせられたりといったようなことは、通常起こりませんから、ご安心ください。
質疑応答が終わった後は、次回期日があればその日時を決定し、次回期日がなければ破産手続は終了となります。
なお、個人の方の自己破産の場合には、債権者集会に続けて免責審尋を行うことが一般的です。
免責審尋とは、裁判所が、破産者の借金を免除すべきかどうかの最終判断を行うために、手続の総仕上げとして行う面接です。裁判官から質問がされますので、落ち着いて返答できるよう、準備を万全にしておきましょう。
5.自己破産は弁護士に相談を
今回は、債権者集会がどのような手続か、債権者集会の流れなどにつき解説しました。
債権者集会が想像していたような怖いものではなく、債権者集会に対しご不安を抱かれていた方も、ご安心いただけたのではないでしょうか。自己破産を含め債務整理をお考えでしたら、まずは一度弁護士にご相談ください。
泉総合法律事務所では、債務整理の経験が豊富な弁護士が多数在籍しており、お客様のご状況に合った最適な債務整理の方法をご提案いたします。債務整理のご相談は無料でお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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